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by matsumo54
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---a-1---重松象平講演会
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先日、九州大学の建築学科まで遠征して建築家・重松象平さんの講演を聴いてきた。


彼はOMA(office for metropolitan architecture)のNY代表を努めている人物である。若干34歳。
OMAといえばレム・コールハースがその代表を務めているということで世界的に有名かつ、世界中の現代建築に多大な影響を与えている設計事務所だから、そのNY支部の代表ともなるとそれはもう、ものすごい人なんだろう。と、そのネームバリューから勝手に決めつけて、はたして話が理解できるだろうかとちょっと不安になりながら講演を聴いた。


結果的に話はすごく単純、且つわかりやすかった。たぶん専門知識のほとんどない人間でも高校生レベルの社会的メンタリティというか常識を持っていればほとんど理解できるのではないかというくらいわかりやすかった。

これこそがOMAの、世界的な建築界において第一線でイニシアティブをとり続けている所以だろうと思った。

彼らは都市・建築を非常にわかりやすいアイコンやロジックに還元し、それをクリティカルに、時には少々アイロニカルに操作することで、これまた非常にわかりやすいアイコンとしての建築を作り出す。(この場合のアイコンとは建築形態それ自体ではなく、それ以前の紙上のダイアグラムであると考えられる。)それゆえに彼らのプレゼンテーションは、非常にクリアでわかりやすい。

また、彼らは戦術として、誰にでも興味を持たせやすく理解をさせやすい経済原理を建築や都市の設計のツールとして用いている。資本経済原理をホイホイと迎合するのでもなく、かといって厭世的に批判するのでもない。ちょっと斜に構えて、クールな態度で資本経済原理のほんの一部をその時々に都合のいいように利用する。そのような態度は、資本経済の渦の中でもがきあがいている人々を不意にドキリとさせるのである。

このような、いわゆるOMAらしさが重松さんの講演にも随所に見られた。正直なところ、ずるいなぁ、と何度も思ったが、話自体は現在の世界的ないくつかの問題を面白い切り口で批評する、非常に示唆に富んだものであったし、しかもOMAの近作のプレゼンを絡めながら話すので、とても楽しいものでもあった。



あと、70年代にコールハースが非常な興味を持って注目していたN.Y.を、重松さんは「現在のN.Y.は社会体制的にも経済原理的にも保守的で古い体制でつまらない場所だと思っている」と一蹴したことがとても興味深かった。
これは、自分の母体であるOMAから脱却するためのポスト・コールハースとしての重松さん自身のアイデンティティであるのか、コールハース自身のN.Y.に対する失望なのか、いずれにせよコールハースの著書である『錯乱のニューヨーク』はもはや古典となったということではないだろうか。

確かにN.Y.というかアメリカという国は2001年の9.11テロ以降、確実に世界からのポジティブな関心を急速に失った。向けられるのはネガティブな視線ばかりになった。例えば今年のベネチア・ビエンナーレの会場は本当にポスト・9.11、ポスト・ブッシュ一色といった様相でえらく辟易させられたが、このような世界的な流れは着実にアメリカのアイデンティティを貶めている。その結果、対外的にも対内的にも保守的になったアメリカに興味が持てなくなったのは時代的なものなのかもしれないが…。




重松さんは、建築家の使命として世界中における国際的な文化圏を作り出したいというようなことを言っていたが、同時に日本のこれからのアイデンティティ形成の問題は自分の世代の責任であるというようにも語っていた。
アイデンティティとは他者の存在によって成立するものである。日本のアイデンティティというものは国際的な視野無しには存在し得ない。戦後、アメリカの後ろに隠れることで放棄し続けてきた日本という国のアイデンティティの形成は、アメリカが失墜しようとする現在において、差し迫った問題になっていることは確かである。

彼がこれから日本をその活動領域の中に含めた時、どのようなアプローチを見せてくれるのか、とても興味がある。
また、僕たちの世代もそれに対して問題意識を持たなければいけないと思う。



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by matsumo54 | 2007-11-03 03:49 | A
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